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みっどさまーず・ないつ

When I opened the door called truth, my childhood ended.

誰かの人生を描くことーー「この世界の片隅に」

 完全にビッグウェーブに乗り遅れていましたが、ようやく見ました。以下感想

 

この世界の片隅に 劇場アニメ公式ガイドブック

この世界の片隅に 劇場アニメ公式ガイドブック

 

 

 

 物語は昭和19年。(この物語はこの先和暦で進んでいくことになるが、平成生まれの人間にとって、いきなり和暦で言われても困るというところはある)(ぼくだけじゃないよね?)。広島の田舎にすむ主人公、浦野すずが呉の北條家に嫁ぐところから始まる。1944年といえば戦局は決定的に連合国側に傾き、すでに日本の敗戦は時間の問題になりつつあるところだ。

 だがそんなことは関係なく、この物語の前半はすずさんの延々と幸せな結婚生活が描かれる。時折戦争の暗い影が画面をよぎるが、なんとか知恵と工夫で乗り越えみんなが笑顔で幸せに暮らしている。

 

 ぼくたちはよくこんな豊かで幸福な時代に生まれてよかったという。でも本当にそうだろうか。彼女たちはTwitterにいるオタクたよりもずっと幸せそうに人生を楽しんでいるように思えてならなかった。そんなことを考えてしまいながら映画を見ていた。

 

 だが後半に入ると物語の雰囲気が一変。本土空襲が始まり、それまでは自分たちの"知らない"海の向こうで行われていただけの戦争がついに自分たちの目の前に迫ってくる。ぼくはこの作品のすばらしさはここにこそあると感じた。

 戦争という非日常的なものの描写を一切排除した前半と、その非日常がようやく日常に入り込んでくる後半。この圧倒的な対比がこの作品を傑作にした。

 

 「歪んでいる」。周りの人に「命だけでも助かってよかった」と言われ、すずさんはそう思う。でも中国大陸で行われていたことや、太平洋の島々で行われていたことをぼくたちは知っている。戦争は1937年から始まっていた。すずさんの周りに戦争がまったくなかったわけではない。僕からすれば、1944年になって今更それを思うのかという気持ちの方が強い。それでも沖縄での玉砕や原爆投下よりも自分が本当に言葉の通り体験したことの方が衝撃は強かったということだ。

 

 現在のぼくたちだって、9.11と3.11の衝撃は絶対違うものだろうと思う。だからこそ当時生きていた人たちからすれば戦争体験なんて現実としてはそんなもんなのだろうなと思いました。(なんだよその締め方)(まあいいじゃん)