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みっどさまーず・ないつ

When I opened the door called truth, my childhood ended.

砕け散るところを見せてあげる

ライトノベル

 とらドラ!の作者の最新作「砕け散るところを見せてあげる」。物語は受験を控えた高校生・濱田清澄が偶然目にした下級生のいじめ。幼稚な悪意をぶつけられる少女・蔵本玻璃を助けたことから始まる。それをきっかけに主人公は彼女のことが気になり始め、やがて素の彼女と接することができるようになる。しかし玻璃が本当に抱えていた問題はいじめではなくて……と物語は進んでいく。

砕け散るところを見せてあげる (新潮文庫nex)

砕け散るところを見せてあげる (新潮文庫nex)

 

 

 

 もちろんいじめから少女を救うのは物語のヒーローであって、受験も迫る普通の高校生がするべきことではない。それは主人公もわかっている。今すべきことは受験勉強でありそしてそれは物語の中でも主人公の友だちから何度も指摘される。でも主人公はいじめられているヒロインを見逃すことはできない。ここにゼロ年代ゼロ年代性がある。ゼロ年代を代表する上遠野浩平の「ブギーポップは笑わない」で竹田くんは「なんといっても変身ヒーローだ。ああいうものはテレビの中にしかいないから面白いのであって、現実の側にいられると混乱の元にしかならない」とヒーローについて語る。それでもだ。それでも清澄はUFOが見えると苦しんでいる玻璃を見逃すことはできない。 

 

 ここで玻璃を助けてハッピーエンドで終わればそれでよかった。でもそれは許されない。ヒロインを助けるところで偶然ヒロインがその父親を殺してしまう。そこで物語はまた別の方向へと進んでいく。ヒーローになり切れなかった主人公はもう1度ヒーローになる必要があった。そして清澄が玻璃にとっての本当のヒーローになってこの物語は終わる。人は死んで終わりじゃない。その人の心は誰かに残り続ける。これはそういった物語なんだ。だから小説自体がループの構造を取っているように思える。

 

「正義なんていくらでもあると笑う、超人なんて子供の夢だと笑う、現実を変えることなんてできないと笑う、今わかった、おれがどうしてもアンタと戦わねばならなかった理由が」

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*1:コンクリートレボルティオ~超人幻想~第24話より